テキストサイズ

死んでも愛して

第8章 ハチゾン

ーくそ、なんだこれは?!

煙って見えなかった足が徐々に見えはじめる。

ごぽぽ…。

ー…まさか?

俺は目を見張った。

自分の足に肉がついている。

腐って、すり減って、崩れて、ぼろぼろになって骨が剥き出しになっていた足に肉がついている。


ーなんだ?!何が起きたんだ?

ごぽごぽっ!

足先では肉の上に表皮が形成され、足がリアルタイムに修復されていく。

くるぶしよりも下部でその反応は起きていた。

俺の足だった。

ー尿か?女の尿に反応して?まさか…こんなことが?

俺は半信半疑で、しゃがんで、手を床の尿だまりに浸けてみた。

ごぽっ!ごぼごぽごぽ…っ!

すぐに新たな反応が始まった。

骨や、剥けた表皮が垂れ下がっていた俺の手に、肉や綺麗な表皮が形成されていく。

ーこれは…すごい…!

まさか、腐乱したこの身体が修復されるなんて夢にも思わなかった。

俺の腐った身体に比べれば、女性の尿なんてキレイなものだ。

俺は肉の戻った手で尿をすくうと、顔面を洗うように尿をなすりつけた。

ごぼごぼごぼっ!じゅじゅじゅ!

たちまち修復反応が起こり、俺の顔面が復活していく。

拘束されている女越しに、壁に張られたミラーにはタイル張りの床にしゃがんだゾンビが1体。

顔面が修復され、そして、その顔がいびつな笑顔をつくっていた。

おぞましいこの光景に、俺は興奮した。

ー元の身体に戻れるかもしれない。

ーこの女の尿があれば…!

ーそうか、この女の尿はゾンビを浄化するのかもしれない…!

ー浄化する水…それって…聖水…?!

ー「聖水」ってこういうことだったのか?!

ーまさか、作者はこのくだりを書きたかっただけなのか?

ちょっと待て、待て。

…一旦冷静になろう。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ