ブラコンですが、なにか?
第3章 Kazunari's lonely day
「ぅ……ん?」
目を開けると明るかった部屋は薄暗くなっていた。
カーテンから漏れる光もない。
手に持っていたコントローラーは、いつの間にかフローリングに転がっている。
テレビはきっと操作しないから、勝手に切れたんだ。
ヤバい……寝過ぎた。
固まっていた身体を解すように、グーっと伸びをする。
長く寝過ぎたせいか身体が痛い。
『こんな所で寝てたら風邪ひくぞ』
ソファーで寝ちゃう俺を、優しく身体を揺らして翔にぃは起こしてくれる。
振り返っても……そこに翔にぃはいない。
この家には誰もいない。
いつもなら、誰かいるのに……
みんないつ帰ってくるの?
ねぇ、早く帰ってきて……
普段感じる事のない寒さに、ソファーに膝を抱えて身体を縮こませる。
何度スマホを見ても、連絡は入って来ない。
カチカチと時計が進む針の音がやけに大きく聞こえるのに、そこに表示される時間は全然進まない。
カチャ…
部屋が真っ暗になった頃、玄関から鍵の開く音が聞こえた。
帰ってきた!
長い間同じ姿勢ていたから、脚が痺れて走り辛い。
縺れそうになりながらも、必死で玄関に向かった。
「うわっ、暗いな……おーい和也、いるのか?」
カチッと照明のスイッチを押すと、智にぃの姿をハッキリと捉えた。
「お帰りなさい…っ!」
「うわっ!」
俺はぶつかるように抱きついた。
「どうした?何かあったのか?」
心配そうに聞いてくる智にぃの胸に顔を埋めたまま首を横に振る。
「みんなは……帰ってきた?」
俺はまた首を横に振った。
「そっか……そっか」
俺の気持ちに気づいたのか、痛いくらいにギュッと抱きしめてくれた。
隙間もないくらい密着する俺と智にぃ。
智にぃのお陰で寒かった身体と心がどんどん温かくなっていった。