ブラコンですが、なにか?
第3章 Kazunari's lonely day
「ただいま……って、どうした?」
ドアの開く音と雅にぃの驚く声が聞こえた。
「雅紀」
「ん、ナニナニ?」
智にぃは俺を抱きしめたまま雅にぃを呼んで、何かを話しているみたい。
小さい声だから聞こえない。
「えっ?そうだったの?」
さらに驚く雅にぃの声が聞こえたと同時に、抱きしめる智にぃの腕が解けた。
「智にぃ?」
何も……してくれないの?
目が合うとくしゃっと頭を撫でて、部屋へと入っていく姿を首だけ動かして追った。
「和也!」
「うわっ!」
俺を呼ぶ声と衝撃が身体を揺らした。
「ふふっ、ただいま!」
俺の髪に頬を擦りつけながら、ぎゅっと抱きしめてくれた。
さっきとはまた違う温かさに包まれる。
「おかえり」
雅にぃの背中に手を回して密着する。
グルルルッ…
「ぷっ…」
「マジかぁ」
空気を読まない雅にぃの腹の虫が鳴った。
「お腹、空いてるの?」
雅にぃを見上げると、コツンとおでこをくっつけてきた。
「めちゃくちゃ空いてる」
至近距離で呟く雅にぃの唇を見つめた。
キス……して欲しい。
「それ……誘ってる?」
雅にぃの指が唇に触れ、そのまま手が俺の頬を包んだ。
グルルルッ…
目を閉じた瞬間、またもや空気を読まない雅にぃの腹の虫。
「もう、知らないっ!」
雅にぃから離れると、部屋へと向かった。
「えっ?ちょっ……待ってよ!」
慌てる声を背中に受けながら、俺は自然と笑みが零れた。
暗かった部屋に灯る明かり。
「和也、お腹空いたぁ」
リビングに入ると、智にぃが冷蔵庫を開けていた。
「卵焼き、作って」
バタバタとこっちに向かってくる足音。
「俺も食べたいっ!」
静かだった家に響く、にぃ達の声。
「はいはい、わかりましたよ」
気だるそうに返事をしながら、智にぃから卵を受け取った。