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ブラコンですが、なにか?

第12章 Holiday of Kazunari①

「松本潤ねぇ」

パクッとポップコーンを口に投げ込み、パンフレットをパラパラと流し見する。


大丈夫かなぁ?


ジュースを飲みながら、ジッと智にぃを見つめる。


普段は根詰めてしちゃうところはあるけど、仕事内容を心配することはない。

でも今回の依頼は智にぃの作品とテイストが違う。


お得意様がお孫さんに絵をプレゼントしたいということで、依頼が来た。

いつもは絵にして欲しい写真を受け取り、それを描いていく。

自画像だったり、風景、昔の写真など様々。


最初の依頼はお孫さんの依頼は大好きな『松本潤』を描いてほしいとの事だった。

しかし著作権などの関係で、その依頼は不可。


ならば『ナラタージュ』という主演の映画からインスピレーションを受けた絵を描いてほしいと……


智にぃの芸術の才能は本当に凄い。


見た瞬間にその世界に引き込まれていく。


誰もが認める才能だと思う。


でも……

映画の内容おろか、肝心の松本潤を知らずに描けるの?


「坂口健太郎……シュッとして、イケメンだな」

パンフレットを買わせて正解だった。


見てなければきっと、この人が松本潤だと勘違いしていた。

「なぁ、和也」

「ん?」


視線をパンフレットに落とす目が一瞬で変わっていた。


チラッとパンフレットを覗き見ると、予告でも流れていたシーンが載っている。


仕事モードに入ったのかもしれない。


「松本潤って……潤に似てない?」

「へっ?」

上を向き、潤の顔を思い浮かべているみたい。

「もう!そんなこと考えてないで、ちゃんと映画の内容を読みなさい!」

ページを捲ろうとしたら、館内の照明がゆっくりと消えていく。


目線の先の智にぃは真っ直ぐスクリーンを見つめる。


よし、俺もしっかり見て……感想を伝えなきゃ。


智にぃの真剣な表情に、少しでも協力できればと俺も視線をスクリーンに向けた。

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