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ブラコンですが、なにか?

第12章 Holiday of Kazunari①

あー、もうイライラする。

何なんだよ、あの女!


智にぃの手助けが出来ればと見ていたのに、俺はそれどころじゃない。

こんな恋愛は映画の中だけってわかっているのに、感情移入してしまう。


葉山先生が気になって仕方がない。

葉山先生を演じる『松本潤』が気になって仕方がない。


だって智にぃが『潤』に似てるって言うから……


葉山先生と潤は性格が真逆だし、もちろん松本潤ってヤツの性格は知らない。


それに強いて言えば、潤はもうちょっと……顔が濃い。


でも一度似てると思ってしまったら、『潤』というフィルターを通して映画を見てしまう。


女の人といい雰囲気とは言えないけど、恋人感を出されるといい気分はしない。


たとえ『映画』の中であっても。


わかってる……

葉山先生は潤じゃないし、ましてや演じている松本潤も潤じゃない。

たまたま下の名前が一緒で、たまたま顔が似てるってだけ。


女の人も女優さんで、演技をしているだけ。

松本潤演じる葉山先生を想っているだけで、潤の存在なんて知る由もない。


理屈じゃわかっているけど……嫌だ。


「和也、どうした?」

「えっ?」

智にぃがピタッと肩をくっつけて耳元で囁く。

「貧乏ゆすり……凄いよ」

指摘されて目線を下に向けると、物凄い速さで膝が揺れていたので慌てて動きを止めた。

「珍しいね、和也がイライラするなんて」

その言葉にドキッとして智にぃを横目で見ると、目線はスクリーンに向いていた。


イライラの理由は気が付いてないみたい。


「ごめん、集中できなかったよね?」

「だいじょ……あっ、このシーン」

その言葉に目線をスクリーンに戻すと、パンフレットにあった浴室のシーン。


シャワーのお湯が争う2人を濡らす。



嫌だ……


見たくない。



葉山先生がキス……してる。


膝に置いていた手をグッと握った瞬間、その拳は智にぃの手に包まれた。

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