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ブラコンですが、なにか?

第13章 Holiday of Kazunari②

小さい頃は翔にぃと手を繋いで外を歩いた事はあった。


でもその時は兄と弟で……


もちろんそれは今も変わらないけど、あの時にはなかった気持ちがある。


久しぶりに包まれる大きな手の温もりに冒頭は映画に集中できなかった。

ようやく心臓の鼓動が落ち着いた頃に、
例のシャワーのシーンが映し出される。

改めてちゃんと観てみるとギュッと胸が締め付けられるような、切ないシーンだった。

前の時のような嫉妬心っていうのは無くて、映画を内容がスッと入ってきた。


そしてこの映画でも嫉妬心を露にするシーンがある。


感情としては怒りに近いのかな?

この映画ではちょっと異常だけどね。


でも、これって真っ当な嫉妬だよね?


俺なんて実際に潤が女性と何かしたわけじゃないのに、葉山先生を演じている松本潤が潤に似てるってだけで勝手に嫉妬してた。


今考えたら……間接的過ぎじゃん。


それを智にぃに見つかっちゃうなんて、めちゃめちゃ恥ずかしいじゃん!


「どうした?和也」

「えっ?」

翔にぃが顔を近づけ小声で訊ねてきた。

「ギュッと手を握るから……」

どうやら俺の幼稚な嫉妬の恥ずかしさに無意識に手に力が入っていたみたい。

「あっ、ごめん」

「ふふっ、いいよ。もしかしてキスして欲しかったの?」

外では絶対に聞くことのなかった色気を含んだ翔にぃ声。

スクリーンではタイミングよくラブシーンが流れる。

「ち…っ!」

テンパった俺は思わず大きな声を出しそうになって慌てて口元を塞いだ。

「可愛いね、和也は」

「翔にぃ!」

小声で反論する俺を見て、クスクス声を押し殺して笑う翔にぃ。


完全にからかわれた!


でも小さい頃はこうやってイタズラを俺に仕掛けて笑ってた。

今では兄弟イチのしっかり者で、俺たち弟を守ってくれる存在。


たまには子どもっぽい翔にぃもいっか。


「ほら、拗ねてないで映画見るよ?」

その言葉に俺は翔にぃの横顔から目線をスクリーンに戻した。

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