ここから始まる物語
第10章 裏切り者
「皆さん! 落ち着いてください!」
クリシーが民衆を鎮めます。民衆は医師を投げるのをやめました。
あたりが静かになると、クリシーはフォビスに言いました。
「資格を得ても資質がない場合は、前の王が次の王を決めることになるのです」
前の王――つまり、ブロミアのことです。しかしブロミアのことです。ピスティとフォビスなら、やはりフォビスを次の王に決めることでしょう。
それをフォビスもわかっているようです。
「父上、次の王は――」
ピスティは、荷車の前に膝をつきました。――その時です。
ピスティの服の袂から、何かが落ちました。
紙切れのようです。
「なんだ、それは」
しわがれたような声で、ブロミアが尋ねました。
「こ、これは――」
フォビスは、あわててその紙を袂に戻そうとしたのですが、
「見せよ!」
病に臥せっているとは思えないほどの大声でブロミアが怒鳴ったので、フォビスはその場に尻餅をついてしまいました。
その拍子に紙を投げ出してしまい、投げ出された紙は、クリシーの足許へ落ちました。
クリシーがそれを拾います。
「見るな!」
フォビスはあわてて止めましたが、手遅れでした。クリシーはすでに、紙を広げて中を見ています。
「これは――」
クリシーの顔がひきつりました。
「――フォビスさま、あなたはやはり、王にはふさわしくないようだ」
クリシーは目の色を変えてフォビスを睨んでいます。
「その紙には、何が書いてあるのだ」
ブロミアは、すでに荷車の上に上半身を起こしていました。さっき怒鳴り声をあげたことで、一時的に力がみなぎったのでしょう。
ブロミアの問いかけに、クリシーは肩を震わせながら紙に書いてあることを読みました。
クリシーが民衆を鎮めます。民衆は医師を投げるのをやめました。
あたりが静かになると、クリシーはフォビスに言いました。
「資格を得ても資質がない場合は、前の王が次の王を決めることになるのです」
前の王――つまり、ブロミアのことです。しかしブロミアのことです。ピスティとフォビスなら、やはりフォビスを次の王に決めることでしょう。
それをフォビスもわかっているようです。
「父上、次の王は――」
ピスティは、荷車の前に膝をつきました。――その時です。
ピスティの服の袂から、何かが落ちました。
紙切れのようです。
「なんだ、それは」
しわがれたような声で、ブロミアが尋ねました。
「こ、これは――」
フォビスは、あわててその紙を袂に戻そうとしたのですが、
「見せよ!」
病に臥せっているとは思えないほどの大声でブロミアが怒鳴ったので、フォビスはその場に尻餅をついてしまいました。
その拍子に紙を投げ出してしまい、投げ出された紙は、クリシーの足許へ落ちました。
クリシーがそれを拾います。
「見るな!」
フォビスはあわてて止めましたが、手遅れでした。クリシーはすでに、紙を広げて中を見ています。
「これは――」
クリシーの顔がひきつりました。
「――フォビスさま、あなたはやはり、王にはふさわしくないようだ」
クリシーは目の色を変えてフォビスを睨んでいます。
「その紙には、何が書いてあるのだ」
ブロミアは、すでに荷車の上に上半身を起こしていました。さっき怒鳴り声をあげたことで、一時的に力がみなぎったのでしょう。
ブロミアの問いかけに、クリシーは肩を震わせながら紙に書いてあることを読みました。