ここから始まる物語
第10章 裏切り者
「エカタバガン帝国皇帝陛下に申し上げます。ここにアウィーコート王国国王、ブロミアの身を捧げることを忠誠の証に、私の身の保証を許可していただきたい。フォビスメノス――」
それを聞いて、ピスティは目の奥が痛くなるのを感じました。
仲間を見ると、同じような感覚を持ったのでしょう。みんな目を見広げています。
民衆も黙っています。
ピスティにとっては、フォビスもブロミアも、家族ながら憎い相手です。殺してしまいたいと思ったことも、何度もあります。
しかし、クリシーが読み上げた内容は、あまりにもブロミアにとってひどいものでした。
つまりフォビスは、自分の父親を犠牲にして、エカタバガンに取り入ろうとしていた、ということなのです。
さっきフォビスは、身体を張ってブロミアを庇いましたが、あれは決してブロミアを守りたかったからではなく、エカタバガンに引き渡すために生きていてもらわなくてはいけないからだったのでしょう。
「この親不孝者めがッ!」
ブロミアは目を血走らせて怒鳴り散らしました。そして、今度は静かな声で、でもはっきりと聞こえる声で言いました。
「次の王は――ピスティをとする」
自分を裏切ろうとしたフォビスに対する、せめてもの仕返しだったのでしょう。
ブロミアはちらりとピスティに目を向けました。
「貴様ら息子どもは、そろって、ろくでなしだな」
それで力尽きてしまったのでしょう。ブロミアは荷車の上に仰向けに倒れると、動かなくなってしまいました。
それを聞いて、ピスティは目の奥が痛くなるのを感じました。
仲間を見ると、同じような感覚を持ったのでしょう。みんな目を見広げています。
民衆も黙っています。
ピスティにとっては、フォビスもブロミアも、家族ながら憎い相手です。殺してしまいたいと思ったことも、何度もあります。
しかし、クリシーが読み上げた内容は、あまりにもブロミアにとってひどいものでした。
つまりフォビスは、自分の父親を犠牲にして、エカタバガンに取り入ろうとしていた、ということなのです。
さっきフォビスは、身体を張ってブロミアを庇いましたが、あれは決してブロミアを守りたかったからではなく、エカタバガンに引き渡すために生きていてもらわなくてはいけないからだったのでしょう。
「この親不孝者めがッ!」
ブロミアは目を血走らせて怒鳴り散らしました。そして、今度は静かな声で、でもはっきりと聞こえる声で言いました。
「次の王は――ピスティをとする」
自分を裏切ろうとしたフォビスに対する、せめてもの仕返しだったのでしょう。
ブロミアはちらりとピスティに目を向けました。
「貴様ら息子どもは、そろって、ろくでなしだな」
それで力尽きてしまったのでしょう。ブロミアは荷車の上に仰向けに倒れると、動かなくなってしまいました。