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ここから始まる物語

第10章 裏切り者

 街じゅうを震わせるような歓声の中、民衆の中の数人が叫びました。
「こいつをどうしてやろうか」
 見ると、その数人はフォビスを押さえつけていました。
 フォビスは地面に押さえつけられ、手首をひねりあげられており、動こうにも動けない様子です。そんなフォビスを哀れだという声はあがりませんでした。むしろ、厳しい言葉が飛び交います。

「裏切り者なんか殺してしまえ!」
「国ばかりか自分の父親さえも裏切ろうとしたんだ、殺してしまえ!」
「何もかもを裏切った男に情はいらない、殺してしまえ!」

 殺せ! 殺せ! 殺せ!
 また大合唱が起こりました。
「落ち着くのだ、みんな!」
 クリシーがみんなを鎮めます。
 民衆は黙りました。
「われわれが勝手に刑を決めてはいけない。せっかく新しい王が誕生されたのだ。その男をどうするかは、ピスティさまに決めていただこうではないか」
 民衆は、おお、と声を揃えました。クリシーの出した案が、みんな気に入ったのでしょう。
 数えきれない視線が、ピスティに向けられます。
「わかった。僕が決めよう」
 ピスティはすらりと剣を抜きました。
「ひッ」
 フォビスが叫び声をあげます。じたばたともがきますが、取り押さえられているので立ち上がることもできません。
 そのフォビスに、ピスティは近づいていき、三歩ほど手前で止まりました。
「や、やめてくれ」
 フォビスは情けない声を出します。

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