ここから始まる物語
第10章 裏切り者
「やめてくれ、お願いだ。助けてくれ、殺さないでくれ、なんでも言うことを聞くから助けてくれ死にたくない殺されたくないお願いだこのとおりだ・・・・・・」
手足を縮めて丸くなって、フォビスの体は震えています。
「許さない」
ピスティは剣を振り上げました。
「ひいッ」
フォビスは鳥のような声で悲鳴をあげました。
民衆も、いっせいに息を飲んだようです。唾を飲み込む音が、聞こえてきたような気がしました。
しかし、ピスティは、振りあげた剣をゆっくりと鞘へ収めました。
「おまえなんか、僕の兄じゃない。家族でもない。立ち去れ」
フォビスは額に脂汗をにじませながら、ピスティを見あげています。
「ゆ、許してくれるのか」
「許すわけじゃない。だが殺すわけでもない」
ピスティの言葉が理解できていないようです。フォビスは笑ったような泣いたような表情を浮かべて引きつっています。
「おまえは生きろ。この先何十年も、貧しさと孤独と侮辱にまみれながら、せいぜい苦しみながら生き続けろ」
ピスティは思い切り憎しみを込めてそういったつもりでしたが、フォビスにはそれが通じなかったようです。
「感謝する、感謝するよ、弟よ」
声をわななかせて礼を言うと、フォビスはよたよたと転びながら、その場から逃げ去ってしまいました。
そんな、兄の情けない後ろ姿を見ながら、ピスティはひらめきました。
ついさっき感じていた、不思議な感覚の正体です。あの、宙に浮いているような、そのままどこまでも昇っていってしまいそうな感覚・・・・・・。
あの感覚は、おそらく優越感だったのでしょう。
手足を縮めて丸くなって、フォビスの体は震えています。
「許さない」
ピスティは剣を振り上げました。
「ひいッ」
フォビスは鳥のような声で悲鳴をあげました。
民衆も、いっせいに息を飲んだようです。唾を飲み込む音が、聞こえてきたような気がしました。
しかし、ピスティは、振りあげた剣をゆっくりと鞘へ収めました。
「おまえなんか、僕の兄じゃない。家族でもない。立ち去れ」
フォビスは額に脂汗をにじませながら、ピスティを見あげています。
「ゆ、許してくれるのか」
「許すわけじゃない。だが殺すわけでもない」
ピスティの言葉が理解できていないようです。フォビスは笑ったような泣いたような表情を浮かべて引きつっています。
「おまえは生きろ。この先何十年も、貧しさと孤独と侮辱にまみれながら、せいぜい苦しみながら生き続けろ」
ピスティは思い切り憎しみを込めてそういったつもりでしたが、フォビスにはそれが通じなかったようです。
「感謝する、感謝するよ、弟よ」
声をわななかせて礼を言うと、フォビスはよたよたと転びながら、その場から逃げ去ってしまいました。
そんな、兄の情けない後ろ姿を見ながら、ピスティはひらめきました。
ついさっき感じていた、不思議な感覚の正体です。あの、宙に浮いているような、そのままどこまでも昇っていってしまいそうな感覚・・・・・・。
あの感覚は、おそらく優越感だったのでしょう。