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ここから始まる物語

第10章 裏切り者

 誰よりも強い立場。何よりも尊い身分。自分の命令ひとつで人の命さえも簡単に消すことができる万能感。
 ピスティが感じた感覚は、きっとそういうものだったのです。
 なかなか気持ちの良いものでした。
 今ここにいる連中も、やろうと思えば、みんな殺してしまうこともできるのです。
 そんな危険な思いを、民衆たちの声がさらに煽り立てました。

「ピスティ王ばんざい!」
「ピスティ王ばんざい!」
「ピスティ王ばんざい!」

 みんなが自分を王だと認めています。仲間たちも、それぞれピスティを祝っています。
「おめでとうございます、ピスティさま。わしはこの時を夢見ておりました」
 そうえいば、ゲンは初めからそんなことを言っていました。ピスティを王座へ導くと・・・・・・。エカタバガン軍と戦う前からです。あの戦いの前から、こうなることを予想して、それを実現させたのならば、ゲンはこれからもきっとおおいに役に立つことでしょう。
「天下泰平」
 フウの力も大きいものでした。きっと、ゲンの考えた作戦が成功したのも、フウが裏で動いていたからでしょう。フウも役に立つ仲間です。
「良かっただよう」
 ライは泣いています。ライは――役に立つでしょうか。確かに腕っ節は強いですが、それだけです。食いしん坊で考えるのが苦手で、ひょっとしたらライはそれほど役には立たないのかもしれません。
「ピスティ! おめでとう!」
 レナも大いに役に立つことでしょう。なんといっても魔法が使えるのです。フォビスとブロミアを捕まえることができたのは、レナの魔法の力のおかげです。

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