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第3章 山賊退治

 フウは短剣を両手に握って、まるでつむじ風のようにくるくると回転しながら、ひしめく山賊たちに切りつけていきます。山賊もフウに斬りつけようとしますが、その刃がフウに触れることはありませんでした。
 道の右から飛び出てきたのは、樽のような体つきの巨漢でした。歳はピスティよりもずっと上の二十五歳。
 短く刈った髪と、額に巻いた鉢巻。太い眉と、タコの吸盤のような唇。戦いの場だというのに、上半身は裸です。でも、体は筋肉に覆われていて、まるで岩を貼り付けているかのよう。だから、きっとちょっとくらい斬りつけられたところで平気なのでしょう。
 彼の名はライ。その巨体から繰り出される怪力が武器です。
 ライは、馬車の車輪ほどもある太い丸太をびゅうびゅうと振り回し、敵を薙ぎ払っていきます。
 ライは、代々王家に使える家柄の生まれでした。いずれは、王を護衛する役として城に務めるようになるはずです。その厳つい体つきとは反対に、ライはとても優しい心根の持ち主でした。父や兄や、城に詰める多くの者に嫌われているピスティを、いつも慰め、励ましてくれます。
 フウとライがあらわれると、山賊たちはたちまちのうちに蹴散らされていきました。
 フウが素早い動きで山賊をかき乱し、ライが力任せに、丸太で敵をなぎ倒します。
 ピスティも負けてはいませんでした。すでに抜き放っていた剣を繰り出して、山賊を斬り、あるいは突き、時には攻撃をかわして、存分に戦いました。
 しかし、いくらフウやライやピスティが強いと言っても多勢に無勢です。
 細い道で渋滞していた山賊も、すぐに混乱状態から立ち直りました。そして道からはみ出て横に広がってきます。ピスティたちを包み込もうという腹でしょう。

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