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ここから始まる物語

第3章 山賊退治

 包み込まれてはいけません。不利になってしまいます。ピスティは焦って、つい剣を落としてしまいました。
 その隙へ漬け込むように、山賊の一人が剣を振りあげました。
 ――やられる!
 ひやりとした瞬間。
 剣を振り上げた山賊は目を見開いて、ピスティに覆いかぶさるようにどうっと倒れました。
 山賊の後ろには、短剣を構えたフウの姿がありました。
「油断大敵」
 フウは白い仮面の下から冷たい声で言うと、またひらりひらりと舞いながら戦いへ戻りました。
 ――くそ!
 ピスティは、心の中で舌打ちをしました。
 いつも武術の訓練を積んでいるとはいえ、ピスティの腕前はこれ以上あがらないのです。腕に怪我を負っていたからです。幼い頃に、木の上から無理に飛び降りて腕に怪我を負ってからというもの、いまだにそれが治らないのです。
 医者からも、この怪我は一生治らないのだ、と言われています。
 それが悔しかったのです。
 でも、今は悔しがっている場合ではありません。ピスティは、自分に覆いかぶさった山賊の体を引き剥がして立ち上がると、ふたたび剣をとって戦いに戻りました。いくら腕に怪我を負っているからとはいえ、剣の腕は人並み以上です。隙さえつくらなければ、そうそう負けることはありません。
 そうしてしばらく戦っていたのですが、いよいよ限界が近づいてきました。
 横に広がった山賊が、とうとうピスティたちを包囲してしまったのです。
 ピスティとライとフウは背中を寄せて懸命に戦いました。しかし、このままでは押しつぶさてしまいます。と、その時です。

「お、おまえたち、それ以上手を出すな。戦うな・・・・・・」

 坂の上から、誰かが叫びました。その声は震えていて、どこか怯えているようでした。

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