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ここから始まる物語

第11章 幸せの終わり、不幸の始まり。

 ピスティは困っていました。
 ここは、城の中の会議室です。
 さっきから、いろんな意見が飛び交っています。

「病人や怪我人を治すために、病院を建てなくてはいけない」
「いや、まずは水だ。誰でも簡単に水を手に入れられるように川を整えよう」
「いやいや、まずは金だ。病院を作るにも皮を整えるにも、金がいる。市場を作るのが最初だ」
「しかし市場を作っても、商売をする者がいなくては意味がない。市場が賑わうように、やはり病人やけが人に現金なってもらわなくてはならない。病院が先だ」

 ほかにもたくさんの意見が出るのですが、ぜんぜんまとまりがないのです。いや、まとめるのが、王であるピスティの役割なのですが、どうまとめていいのかわからなくて困っているのです。
 ピスティはまだ十四歳。それにくらべて、意見を交わしている家来たちはみんな大人です。中には、白い髭を伸ばした老人までいます。ピスティの言うことなど、ほとんど聞いてくれません。とはいえピスティは王です。何がいえばある程度は頷いてくれるものの、それは形だけなのです。
 ――どうしよう。
 ピスティは両手で髪をぐしゃっと掴んで机に肘をつきました。
「ねえ、ピスティ」
 隣に座っているレナが、穏やかな声で話しかけてきました。レナは、ピスティの将来の妻です。だから、こうして会議にも出ているのでした。
「どうしたんだい」
 ピスティは頭が痛いのを我慢して、無理やりに笑みを浮かべて返事をしました。レナも優しげな表情を浮かべています。

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