ここから始まる物語
第11章 幸せの終わり、不幸の始まり。
「何を怒ってるのかわからないよ」
「わからない? 本当にわからないなら、あなたは王である以前に、もう人間じゃないわ!」
レナはたまらず、手をあげてピスティの頬を張り飛ばしてしまいました。
「何をする!」
ピスティが怒鳴り返します。
「私を妻に迎えたのは、私が好きだからじゃない! 私の魔法の力が便利だから、それを利用したかっただけでしょ! この人でなし!」
「そんな理由で妻を迎えるものか! そんなに僕のことが気に入らないんなら、もう結婚の話は取り消しだ!」
「こっちからお断りよ!」
レナはそっぽを向くと、そのまま部屋から出て、ついでに城から飛び出していったのでした。
※
城を飛び出してから、悔しさを吹っ切るように、レナは道を走りました。
しかし、息が切れて、道の脇に生えている木にもたれて休んでいると、少しずつ不安がわいてきました。
レナには、行き場所がないのです。
宿に泊まるお金もないし、道端で寝るわけにもいきません。もちろん、城に戻ることなんて絶対にできません。
夜も深まって、人通りもほとんどなく、静けさだけがあたりを覆っています。
優しい夜空を見あげながら困っていると、ふと、声をかけられました。
「あなたは――レナさまではありませんか」
振り返ると、見覚えのある顔。
「あなたは――」
声をかけてきた男は、紛れもなくクリシーでした。
王位をめぐって、ピスティとその兄、フォビスが対立していた時に、ピスティの味方をしてくれた、あの僧侶です。
「こんな時間にどうしたのですか」
クリシーはそばまで来ると、背の低いレナの顔に、優しげな視線を注いできました。
「実は――」
「わからない? 本当にわからないなら、あなたは王である以前に、もう人間じゃないわ!」
レナはたまらず、手をあげてピスティの頬を張り飛ばしてしまいました。
「何をする!」
ピスティが怒鳴り返します。
「私を妻に迎えたのは、私が好きだからじゃない! 私の魔法の力が便利だから、それを利用したかっただけでしょ! この人でなし!」
「そんな理由で妻を迎えるものか! そんなに僕のことが気に入らないんなら、もう結婚の話は取り消しだ!」
「こっちからお断りよ!」
レナはそっぽを向くと、そのまま部屋から出て、ついでに城から飛び出していったのでした。
※
城を飛び出してから、悔しさを吹っ切るように、レナは道を走りました。
しかし、息が切れて、道の脇に生えている木にもたれて休んでいると、少しずつ不安がわいてきました。
レナには、行き場所がないのです。
宿に泊まるお金もないし、道端で寝るわけにもいきません。もちろん、城に戻ることなんて絶対にできません。
夜も深まって、人通りもほとんどなく、静けさだけがあたりを覆っています。
優しい夜空を見あげながら困っていると、ふと、声をかけられました。
「あなたは――レナさまではありませんか」
振り返ると、見覚えのある顔。
「あなたは――」
声をかけてきた男は、紛れもなくクリシーでした。
王位をめぐって、ピスティとその兄、フォビスが対立していた時に、ピスティの味方をしてくれた、あの僧侶です。
「こんな時間にどうしたのですか」
クリシーはそばまで来ると、背の低いレナの顔に、優しげな視線を注いできました。
「実は――」