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ここから始まる物語

第12章 罠からの脱出

 さっきまでは澄んでいた目が、まるで山火事のように燃えています。
「返して!」
 声はまるでライオンのよう。
 一瞬の事でしたが、ピスティはコーリーに邪悪なものを感じました。
 封筒の中には、コーリーがピスティに知られたくない何かが入っているのでしょう。
 封筒を奪おうとするピスティの手を、ピスティはひらりとかわして距離を取りました。そして、封筒の中身を取り出しました。
 中身をみて、ピスティはびっくりしました。

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愛しのコーリーへ

 今夜もあなたとお待ちしています。
 いつもの場所で、今日こそは私の想いをお聞きください

  あなたのピスティより
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「なんだこれは!」
 ピスティは、コーリーを怒鳴りつけました。ピスティは、恋文を書いてなどいません。一度は婚約をしたレナに対してだって書いたことがないのです。なのに、素性のわからないコーリーに対して、こんなことを書くはずがありません。
 同時に、ピスティの頭の中で、すべてが結びつきました。
 もし、この手紙をレナが見ていたのだとしたら、レナの言ったこと、したことにすべて説明がつきます。
 ピスティが初めてコーリーにあった時も、コーリーはこの封筒を落としたのでした。そして、ピスティがそれを拾って渡してあげたのです。
 それを、レナは見ていたのです。加えて、レナがこの内容を知っていたとするならば・・・・・・。
 ピスティがコーリーを愛していたと、レナは思ったでしょう。だからこそ、レナはあれほどにピスティを疑い、怒り、ピスティの頬を叩き、ついには城から出ていってしまったのです。
 そしてコーリーは、そうなることを、はじめから企んでいたのです。

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