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第12章 罠からの脱出

 思えばはじめからおかしいことだらけでした。
 父に追い出されたからといって、王さまに直接会おうなんて普通は思いません。それに、初めてコーリーと会話をした時に、コーリーはかなり奇妙な質問をしていました。

 父は、私のことをどう思っているのでしょうか――。
 もしも王さまが私の恋人だったら、どうなすってくださいますか――。

 それに、ピスティはこう答えました。

 そりゃあ、きみのことが大切だ、と思ってるんじゃないのかい――。
 きみのために命を捨てでも守ってあげるさ――。

 それらの言葉の一部だけを聞けば、まるでピスティが、コーリーのことを「大切だと思っている」と聞こえるだろうし、コーリーのためなら「命を捨ててでも守ってあげる」と宣言しているかのように聞こえることでしょう。いや、実際にレナにはそう聞こえたのでしょう。
 そこまで計算して、このコーリーという女はピスティに近づいたのです。
 それは、不幸な偶然なんかでは、絶対にありえません。なぜなら、偶然だとしたら、こんな手紙があるわけがないからです。
 では、いったい何のために、コーリーはこんなことをしたのでしょうか。
 いや、それよりも、レナはどこへ行ったのでしょうか。自分のことを「生まれたばっかりだ」と言っていたレナに、行き先のあるはずがありません。
 突然、とんでもない恐怖が、ピスティの胸をかき乱しました。
「ふふふふ」
 コーリーが不気味な笑いを浮かべています。あれほど美しかったコーリーの姿が、今は悪魔のように見えます。城の窓から漏れる明かりが、てろてろとその姿を照らしていて、明るい部分と闇に溶けている部分が揺らめいています。
「なんのためにこんなことを! レナはどこへ行った!」
 ピスティは怒鳴りつけました。

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