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第3章 山賊退治

 老人の名はゲン。左目に眼帯をつけています。かつては、遠い東の国で軍師として活躍していたのだと聞いたことがあります。
 たしかに、ゲンは、珍しい格好をしています。白髪を、ぎゅっと絞るように頭のてっぺんでひとつに縛っています。着ているものも妙です。必要以上に袖がゆったりとしているし、下半身を覆う布は幅広で、膝の動きが読み取れないほどです。きっと東の国では、こういう服装が当たり前なのでしょう。使っている剣も、ピスティたちが使っているものとはだいぶ違います。少し反っていて、その片方だけにしか刃がないのです。普通の剣なら、まっすぐで、刃も両方についているのに・・・・・・。
 ゲンは、戦いの腕はからきし駄目ですが、推理、用兵、謀略などに優れています。肌は灰色で眉は吊りあがり、枯れ木のように痩せていて、決して人相がいいとは言えませんが、ピスティたちを裏切るような真似はしません。
「遅いだよう、ゲン爺さん」
 息を切らせながら、巨漢のライが文句をつけました。
「戦死寸前」
 フウも、短い言葉で抗議しました。でもフウは白い仮面をつけているので、表情が見えません。それに息も切れていないので、本当に死にそうだと思っていたのかどうかわかりません。
「いやあ、悪い悪い」
 仲間ふたりの抗議にも、ゲンはゆったりとした態度で応じます。
「思いのほか、あの頭領を脅すのに手こずってしまってな」
「おかげで俺たちは死にそうになっただよう」
「約束厳守」
 ライとフウはまだ文句を言っています。
「まあまあ、二人とも、結果として上手くいったからいいじゃないか」
 ピスティは剣をおさめると、服の汚れを払いながら立ちあがりました。そして、ライとフウに手を貸して、助け起こします。
「それに、この作戦を考えたのはゲンなんだ。それで山賊を追い払えたんだから、そんなに責めたらゲンがかわいそうだよ」

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