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ここから始まる物語

第15章 恨みと恐れと自覚

「願えば、叶えられる?」
「そう言ってるでしょ」
 レナは、人差し指でピスティの鼻をつつきました。
「ほかのこともそうよ。ピスティはずっと、腕の怪我が治ればいいと思っていた。だから、私は魔法の力で治してあげた」
 言われてみればそうです。医者からも、一生治らないと言われていた怪我が治ったのです。おかげで、ピスティは思う存分に剣を振るうことができるようになりました。
「他にもわるわよ」
 レナは、自分が魔法を使って解決したことを、次々と話し始めました。
「エカタバガンと戦ったあと、ピスティたちは、お兄さんのフォビスとお父さんのブロミアを捕まえるために後を追っていたわよね。でも逃げ切られてしまいそうだった。あの時も、ピスティが願ったから、二人を捕まえることができたの」
「僕が、願った?」
「そうよ。ピスティは願ったの。『追いついてくれ!』って」
 その時のことを、ピスティははっきりと覚えています。
 病身のブロミアを荷車に乗せて走るフォビス。それを追うピスティと仲間たち。どんなに必死に走っても、フォビスたちには追いつけそうにありませんでした。
 目前には門。その向こうはすでにエカタバガン帝国の領地。だから、フォビスたちが門を抜ける前に捕まえないといけなかったのですが、どうしても距離を縮めることができなかったのです。
 あの時、ピスティは走りながら、確かにこう思ったのです。

 追いつくんだ!――。
 追いついてやる!――。
 追いつけないかもしれない――。

 そして、

 追いついてくれ!――。

 と。
 その次の瞬間、ピスティたちはいつの間にか、前を走るフォビスを追い越して、門の前にいたのです。
「あの瞬間移動も、魔法の力だったのか」

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