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ここから始まる物語

第15章 恨みと恐れと自覚

「あなたが願ったから、叶えられたのよ」
 確かに難しい話ではありません。ピスティが、「こうなってほしい」と願ったことは、そのまんま叶っているのです。
「それに、私もピスティに助けられたのよ」
「僕が助けた?」
「そう。昨日の夜、私が閉じ込められていた祠。私があそこから出られたのは、ピスティのおかげよ」
 昨晩のことが、頭の中に蘇ります。
 祠を取り囲む「神」たち。その神たちが唱える呪文。ピスティは、その神たちを蹴散らそうと、剣を振ったのですが、透明な壁に弾き返されてどうすることもできなかったのです。でも、諦めかけた時、レナはいつの間にかピスティのすぐそばにいたのでした。
「ピスティは、あの時、願ってくれたでしょ。『祠から出てきて欲しい』って」
 確かに、そう願いました。

 レナ! 頼む! 祠から出てきてくれ! そして、僕に謝らせてくれ――。

 すがるような思いで、心の中でそう願ったのを覚えています。
「だから、私は祠から出ることができたの。そして、仲直りすることができたの。――ピスティ」
 レナはピスティの正面へまわると、笑顔を輝かせました。
「ありがとう! 私のために願いごとをしてくれるなんて、とっても嬉しかったわ」
 ――そういうことだったのか。
 ピスティは返事をするのも忘れて、呆然と立ち尽くしていました。
「ピスティ、どうしたの?」
 笑顔から一転、レナの表情は曇っています。
「嬉しくないの?」
「嬉しいよ、すごく嬉しい」
 ピスティは、レナの両手を握りました。
「ただ、やっぱりわからないことがあるんだ」
「なあに?」
「そんなに便利な力があるなら、僕が願うまでもなく、レナが自分の意思で魔法を使って、あの祠から出ることもできたはずだ。どうして、そうしなかったんだい」

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