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ここから始まる物語

第15章 恨みと恐れと自覚

「それは、私も試したわ」
 レナは視線を落とすと、ピスティが握りしめている手を引き離して、石ころを蹴るような動作を始めました。
「でも、できなかった。きっと私は、自分の意思で魔法を使うことができないの」
「どういうことだい」
「誰かが願った時だけ、それを叶える形でしか、魔法は使えないのよ」
「そうなのかい」
 でも、そう考えるしか、魔法の力を説明することができません。しかし、そうだとしても、レナの力は絶大です。何しろ、願ったことがそのまま現実になってしまうのですから・・・・・・。はじめからそうと知っていたら、今まで、こんなに苦労することもなかったのでしょう。
 が、知ってしまったなら、これからは、何の苦労もしなくていいのです。いや、苦労だけではありあめん。なんでも思い通りになるのです。例えば、アウィーコート王国の王なんかではなく、世界の王者になりたいと願えば、そうなることができるのです。
 が、もしそんなことを願ったら、そしてそれが実現してしまったら、なんだか自分が化物になってしまうような気がして、ピスティは恐ろしくなりました。ピスティは、思わず頭を振りました。
「だからね、私はこの国をもっともっと良くできると思うのよ」
 レナはいつの間にか窓際にもたれかかっていました。
「この国を、良く?」
「そう!」
 レナはくるっと振り返りました。
「病院も市場も井戸も、私の魔法を使ったら、簡単に出来ちゃうんだから」
 病院、市場、井戸――。それらは、家来たちの会議で出ていたことでした。どこからどうやって手をつけるかで、さんざん揉めた挙句、まだ答えが見つかっていないのです。
「そうか、そういうことだったのか」

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