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ここから始まる物語

第15章 恨みと恐れと自覚

 レナと一緒に会議に出ていた時、レナは確かに言っていました。

 病院と、井戸と、市場が必要なのよね――。
 それ、私がなんとかしてあげようか。私、魔法使いだから――。

 しかしあの時は、ピスティはそれを断ったのでした。なぜなら、レナが疲れを隠して強がっているのだと思い込んでいたからです。だから、あの時は願いさえしなかったのです。
 でも、それはピスティの思いすごしだったようです。本当にレナは無理なんてしていなかったのでしょう。
 ピスティは、レナの愛くるしい顔を見つめながら、恐る恐る尋ねました。
「じゃあ、その三つができるように願えば、叶えてくれるんだね」
「もちろんよ」
 レナはこっくりと頷きました。
「それじゃあ、頼むよ――」
 ピスティは息を飲んでから、声に出して言いました。

「両院と市場と井戸が、充分にほしい」

 ※

 その願いは、本当に叶いました。
 国じゅうから起こったどよめきが、城にいるピスティの耳にも届いたほどです。
 それから次々と、庶民たちが城へ押し寄せてきたのでした。
 いったい何が起こったのか、その嬉しさと疑問を問いただすためです。
 ピスティは王として、その騒ぎを放っておくことができませんでした。
 ピスティは、城の一番高い窓から、押し寄せる民衆を見下ろして、すべてを説明しました。
 妻のレナが魔法使いであること、ピスティが願えば、なんでも願いが叶うこと、その力で、井戸と市場と井戸がたくさんできたことなどなど・・・・・・。
 民衆たちはそれを聞いてびっくりしているようでした。
 ピスティは、自分が知っていることをすべて話して説明を終えたのですが、騒ぎはおさまりませんでした。
 その翌日には、もっとたくさんの民衆が集まってきたのです。

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