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ここから始まる物語

第15章 恨みと恐れと自覚

 押し寄せてきた民衆たちは、口々にレナの名を呼び、自分たちの願いを口にし始めたのです。

「お金持ちになりたい」
「いい男と結婚したい」
「有名人になりたい」

 中には、

「死んでしまった子供を生き返らせたい」

 という声も混じっていました。
 レナはそれらを聞いて、その一つ一つを叶えようと思ったのですが、一つとして叶えることができませんでした。
「どうして叶えられないんだろう」
 ピスティが不思議に思って尋ねると、
「私はたぶん、ピスティの願いしか叶えられないのよ」
 とレナは答えました。
 そこでピスティは、試しに、民衆の中から一人の男を選んで、どんな願いを叶えたいのかを聞き出しました。その男は、
「もっと大きな家に住みたい」
 と言いました。
 ピスティはそれを聞いて、レナに向かって言いました。
「この男に、城よりも大きな家を建ててやりたい」
 すると、次の瞬間、また街の中からどよめきの声があがりました。
 外を見ると、どうでしょう。ピスティが願った通り、街の真ん中に、とてつもなく大きな建物ができているではありませんか。
 男は大喜びして、何度もお礼を言うと、その大きな家に向かって帰っていきました。
 他人の願いでも、ピスティが代わりに願ってやれば、叶えることができるようです。
 そうとわかったピスティは、レナの力を借りて、次々と人々の願いを叶えていきました。
 すると、街の中には大きな建物が立ち並び、一度は死んだ者も生き返り、仕事などしなくてもお金は充分に、そしてすべての人に行き渡り、国じゅうが幸せに包まれたのでした。
 しかし、です。

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