ここから始まる物語
第16章 フォビスメノスの野望
ごみを置かれること自体は、男にとってはそれほど大した出来事ではありませんでした。しかし、これまでに受けてきた嗤いや非難や見下した態度などへの怒りが爆発するきっかけには充分な出来事でした。
男の目は、いつの間にか、真っ赤に染まっていました。その赤色は、男の怒りであり、爆発であり、破壊でした。
この日、目を赤く染めていたのは、この男一人ではありませんでした。街じゅうの、いえ、国じゅうの者が、目を赤くしていたのです。
※
街の人びとの様子がおかしいことに、気づいている人物がいました。
その名はフォビスメノス。
みんなが幸せになる中、フォビスだけは、貧乏なままでした。王位を奪われてからずっと、ぼろぼろの服を身にまとい、そこらへんに落ちている残飯を拾っては食べ、わずかなお金を恵んでもらい、なんとか毎日を食いつないでいたのです。
もちろん、フォビスだって、願えば幸せな暮らしを手に入れることができました。が、願うこと自体が、フォビスには許されなかったのです。
無理もありません。ピスティからは、目の仇にされていているのですから・・・・・・。
が、それがフォビスにとっては幸いとも言えました。
この日、いつものように広場の隅で目を覚ましたフォビスは、街の人びとの異変にすぐに気づいたのです。
目が赤く光り、どこか張り詰めたような雰囲気の人びと。ちょっとでも触れば爆発してしまいそうな、危なっかしさ。
例えるならば、誰もが怒るきっかけを欲しがっているような――そんな雰囲気でした。
――これは、チャンスかもしれない。
フォビスは閃ました。
彼らの怒りの矛先を、うまく利用しようと考えたのです。
男の目は、いつの間にか、真っ赤に染まっていました。その赤色は、男の怒りであり、爆発であり、破壊でした。
この日、目を赤く染めていたのは、この男一人ではありませんでした。街じゅうの、いえ、国じゅうの者が、目を赤くしていたのです。
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街の人びとの様子がおかしいことに、気づいている人物がいました。
その名はフォビスメノス。
みんなが幸せになる中、フォビスだけは、貧乏なままでした。王位を奪われてからずっと、ぼろぼろの服を身にまとい、そこらへんに落ちている残飯を拾っては食べ、わずかなお金を恵んでもらい、なんとか毎日を食いつないでいたのです。
もちろん、フォビスだって、願えば幸せな暮らしを手に入れることができました。が、願うこと自体が、フォビスには許されなかったのです。
無理もありません。ピスティからは、目の仇にされていているのですから・・・・・・。
が、それがフォビスにとっては幸いとも言えました。
この日、いつものように広場の隅で目を覚ましたフォビスは、街の人びとの異変にすぐに気づいたのです。
目が赤く光り、どこか張り詰めたような雰囲気の人びと。ちょっとでも触れば爆発してしまいそうな、危なっかしさ。
例えるならば、誰もが怒るきっかけを欲しがっているような――そんな雰囲気でした。
――これは、チャンスかもしれない。
フォビスは閃ました。
彼らの怒りの矛先を、うまく利用しようと考えたのです。