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第16章 フォビスメノスの野望

 フォビスは、広場の真ん中に立つと、行き交う人々に向かって大声で叫びました。
「皆のものよ、その不満、その怒り、私にはよくわかる」
 そんなフォビスの言葉に、近くを歩いている者は足を止めました。そんな彼ら一人ひとりの赤い目を見つめながら、フォビスは言いました。
「今の、この国のあり方に、みんなは怒りを覚えているのだろう。物に溺れ、便利さに浮かれ、それでみんなは不幸になってしまったのだ」

 不幸――。

 その一言に、多くの者がぴくりと身体を震わせました。幸せになるために願いを叶えてきたのに、それを不幸だと言われたことが気にかかったのでしょう。
 フォビスは大勢に問いかけました。
「みんなは、ピスティ王をどんな方だと思うか」
 すると、ぽつぽつと、何人かの者がそれに答えました。

「英雄だ」
「立派な王だ」
「勇敢だ」

 それに対して、フォビスは、さらに問いかけました。
「では、なぜピスティ王は英雄であるか」
 その問いかけの答えは、みんな同じでした。

「エカタバガン帝国の軍を追い返したからだ!」

 思った通りです。誰も知らないのです。あのアウィーコート大戦役が、どうして起きてしまったかを・・・・・・。
 フォビスはさらに問いを重ねました。
「では、どうしてエカタバガン帝国が攻めてきたのか、みんなはご存知だろうか」
 その問いに答えられるものはひとりもいませんでした。目を赤くした彼らは、互いに顔を見合わせるばかりです。
 誰も答えることのできなかったその問いかけの答えを、フォビスは自ら言いました。

「それは――ピスティ王がみずからエカタバガンに戦争を仕掛けたからだ!」

 人びとは色めき立ちました。

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