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第16章 フォビスメノスの野望

 アウィーコート王国の平和を脅かそうとした敵が、エカタバガン。その強く大きな国の軍隊を追い返して平和を守ったのがピスティ王。そう思ってピスティを祭り上げたというのに、そのピスティ王自身が戦争の元になっていたなんて、思いもしなかったことです。驚くのも、それに怒るのも当然でしょう。

「なんでピスティ王さまが・・・・・・」
「戦争の原因がピスティ王さまだだなんて」
「英雄になるために、わざと戦争を引き起こしたんじゃないか」

 民衆は勝手に想像を膨らませて、勝手に怒っています。
 その怒りは徐々に広がり、膨らみ、雄叫びとなって街の空気を震わせました。
 赤く光る目は、ますます明るさを増して、ぎらぎらと輝いています。
 そんな民衆の様子を、フォビスはしめしめと思いながら眺めていました。民衆の高ぶった気持ちは、ピスティへの怒りへと方向を変えました。
 その怒りを、フォビスは最後にもうひと押ししました。
「その怒りをぶつけるのは今だ! 私に続け! 今こそ王の誤りに鉄槌を下すのだ!」
 民衆の雄叫びは、混ざり合い、響きあって、空を揺るがしました。
 その雄叫びが収まると、民衆の中の一人が、ぽつりと、こんなことを聴きました。

「あなたは――どなたなのですか」

 どうやら、民衆はフォビスの正体に気づいていないようです。かつて弟と王位を争って敗れた人間として、フォビスの名前は知れ渡っています。が、まさかそのフォビスが、目の前にいるとは思ってもいないようでした。それも仕方のないことでしょう。貧乏な暮らしのせいで、かつての姿とは大きく変わってしまっているのです。まさか王族の人間が、乞食のような格好をしているなんて、誰も思わないことでしょう。
 フォビスは少し考えてから、思わずにやりと笑いました。これは、民衆の心を掴むチャンスです。

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