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第17章 究極の二択

 いったい、話がどこへ向かおうとしているのか、ピスティにはまったくわかりません。質問してみたくても、何を質問していいのかさえわからないのです。ピスティはもどかしい気持ちをおさえて、レナの話に耳を傾けました。
「誰のどんな願いを、いくらたくさん叶えても、私はぜんぜん疲れたりしなかったわ。むしろ心地が良かったの。みんなの喜ぶ顔とか、街が少しずつ変わっていく様子を見ていると、とても気持ちが満たされていったの」
「レナさまがお優しい証拠だだよ」
 ライがなんの疑いも持っていない様子でそう言いました。
「違うの!」
 しかしレナは、そんなライの言葉を強く否定しました。
「そうじゃないの。私、なんでこんなに気持ちよくなるんだろうって、ずっと考えていたんだけど、それが、やっとわかったの」
 いつの間にか、レナは身体を震わせていました。まるでなにかに怯えるかのように・・・・・・。いや、実際に怯えていたのかもしれません。
「じゃあ、どうして気持ちよくなったんだい」
 ピスティの質問に、レナは思ってもいないことを答えたのです。
「私は、私は――」

 人の心を喰っていたの――。

「なんだって?」
 ピスティはのけぞりました。思いもしない言葉に驚いたのです。ほかの仲間も同じでした。
「心を喰っただあ?」
 とライは鼻を広げ、
「なんですと」
 ゲンは素っ頓狂な声をあげ、
「奇々怪々」
 フウは僅かに目を薄めています。
 しばらく絶句したあと、ピスティは尋ねました。
「心を喰うって、どういうことなんだい」
「そのまんまの意味よ。感動したり悲しんだりする気持ちを、私は人びとから奪って、自分の栄養にしていたの。人間が、ほかの生き物を食べて生きるのと同じように・・・・・・」

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