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ここから始まる物語

第17章 究極の二択

 レナは視線を落として、口許にほのかな笑みを浮かべました。
「ピスティが私を大切にしてくれるのは、私のことが好きだからでしょ。つまり、私を手放すことでピスティ自身が辛くなるから、私を殺せないんでしょ」
「そんな――」
 ピスティはまた怒鳴りそうになりました。レナが勝手なことを言ったからではありません。勝手に言ったのかもしれませんが、言っていることが正しかったからです。だからこそ、怒鳴ろうとしたのに、その後が続かなかったのです。
「お願い。私は悪者になりたくない。悪者として嫌われながら生きていくくらいなら、みんなから惜しまれながら、幸せに死んでいきたい。だから、お願い。もうこれ以上、私を生きさせないで・・・・・・」
 すがるような目をするレナの顔を見ると、ピスティも少し心が揺らぎました。これほどまでに決心を固めているのなら、これほどまでに思いつめているのなら、命を絶ってあげるのもひとつの優しさなのかもしれません。
 しかし、そう思ったのは一瞬のことです。これほどまでにピスティを理解して、味方してくれるレナを死なせることなんて
やっぱりできませんでした。
「ピスティさま」
 うしろからゲンの声がしました。
 ピスティは振り返って、ゲンを見ました。さっきとは違って、ゲンは柔和な面持ちをしています。ライとフウは相変わらずそっぽを向いていましたが・・・・・・。
「あとはもう、王であるピスティさまのご決断次第。レナ殿の尊い犠牲を受け入れて国を救うか、レナ殿ひとりのために国を滅ぼすか。さあ、お選びくださいませ」
 国か、それともレナか。

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