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第17章 究極の二択

 たしかに、あの憎らしい兄、フォビスです。ピスティが命を助けてやってから、ずいぶん貧しい暮らしをしていたようです。服がぼろぼろなのはもちろん、痩せて頬がこけ、汚い髭がたくさん生えています。
 フォビスは命令しました。
「来い、おまえら」
 すると、多くの足音が聞こえ、フォビスの後ろに大勢の人たちが群がりました。それは、真っ赤な目を光らせた、街の住人たちでした。
 フォビスは、ピスティの目を見据えたまま、後ろに控える住民たちに向けて言いました。

「この男がピスティ王だ。自分が英雄となるために、エカタバガンとの戦争をわざと引き起こし重罪人だ!」

 ピスティの身体を、足許から頭の先へ、寒気が突き抜けていきました。
 フォビスがぶちまけた言葉は、まったくの嘘ではありません。英雄になるつもりはまったくありませんでしたが、ピスティがアウィーコート大戦役のきっかけを作ってしまったことは事実です。それは、いずれ話さねばならないことでした。
 そして、実際に話す機会はありました。
 それは、ピスティがまさしく王になる瞬間のことです。
 その直前に、ピスティはゲンからこう言われていたのでした。

 戦争の原因を作ってしまったことに責任をお感じなのであれば、まずは王になることです。王になってあらためて民意を問うのです。そして、得られた民意からは決して逃げぬこと、それが今できる最善の方法でございますぞ――。

 そう、ピスティが王になったそもそもの理由は、自分の犯した罪――戦争を引き起こした原因を作ってしまったこと――を国民に告白し、その罪の重さをはかるためでした。

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