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ここから始まる物語

第18章 団結

 誰もいなくなったのを確かめてから、フォビスはレナに言いました。
「私の思い通りになれば、傷つけたりはしない」
「思い通り? どうしろって言うのよ」
「私の――妻になれ」
「いやよ」
 レナは間を置かずに、きっぱりと断りました。
「レナ、自分の立場をわきまえているのか。おまえは縛られている。自由はないのだ。私の言うことを聞かなかったら、どうなるか考えてみるがいい」
 そう言って、フォビスは短剣を取り出しました。それを、首筋に近づけます。が、レナが反発を弱めることはありませんでした。
「ふん、そんなことで私を従わせられると思うの? 私はすでに死を覚悟しているの。刃物なんて怖くなんかないわ。殺したいなら殺してみなさい!」
 レナは身をよじってフォビスの腕から逃れたかと思うと、片足をあげて、かかとでフォビスの足を踏みつけました。
「痛いッ」
 フォビスは思わず叫びました。
「この・・・・・・!」
 フォビスは怒りに震え、短剣の切っ先をレナの胸元に突き刺しました。
 ところが・・・・・・。
 レナを傷つけることはできませんでした。
 短剣の切っ先は、確かにレナの胸に埋まっています。しかし、手応えがないのです。静かな水を突き刺しているのと変わりません。もちろん、レナの身体から血が流れることもありません。
 フォビスは戦慄しました。魔法使いは簡単には殺せない――というのは、言うまでもなく出任せです。本当に刃物が通じないとは思わなかったのです。
 フォビスは驚きましたが、同じくらいにレナも驚いているようでした。

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