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　フォビスは甲高い声をあげて叫ぶと、短剣を放り出して、その場に尻餅をついてしまいました。
「助けてくれッ！」
　情けない声で叫びます。
　――最ッ低。
　レナは心の底からフォビスを蔑みました。
　その時です。
　いったんは去った民衆たちが、赤い目を光らせながら、また戻ってきました。フォビスの悲鳴を聞きつけたのでしょう。
　レナは逃げませんでした。いずれにしても死ななければいけない身なのです。そう自分で決意したのです。殺されるなら本望です。といっても、あの民衆たちにも、きっとレナを殺すことなどできないでしょうが･･････。
　集まってきた民衆たちは、地面に座り込んで怯えているフォビスを見ると、その周りを取り囲み、心配そうに声をかけていました。が、そのうち、その声がどんどんと乱暴なものに変わっていきました。

「あなたは魔法使いを殺せるのではないのですか」
「どうして怯えているのですか」
「もしかして、俺たちを騙したのか」

　目の赤みが増し、目つきも鋭くなっていきます。やがて民衆は、みんなしてフォビスに暴力を振るい始めました。人垣に隠れていてフォビスの姿ははっきりとは見えませんが、地面に転がっているところを蹴られ、避けた先でを踏みつけられ、持ちあげられては殴られて、また地面に地面に転び、また蹴られ･･････と、激しい暴力に耐えている姿が、垣間見られます。
　卑怯者のフォビスが悲鳴をあげている姿は、見ていて胸がすきましたが、あまりにも乱暴なやり方に、すぐにレナは目を背けてしまいました。
　しかし、フォビスを痛めつけるのに飽きたのでしょうか。今度は民衆同士が喧嘩を始めました。
　その理由はとてもつまらないものでした。足が当たったとか、体が臭いとか、そんな理由にもならない理由ばかりです。