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ここから始まる物語

第4章 確執

 その癇癪の虫を我慢しているうちにも、ブロミアの小言をは続きます。
「いつまでも子供ではないのだぞ。おまえがそうして遊んでいる間にも、お前の兄は学問をおさめ、王としてのあり方を学んでいる。おまえも、少しは兄を見習ったらどうだ」
 このひと言は、ピスティの心に突き刺さりました。
「おそれながら、父上」
 ピスティは、ふつふつと沸きあがる溶岩のような怒りを押さえ込みながら立ちあがりました。
「僕は確かに、勉学では兄上にかなわないでしょう。僕の王族としての振る舞いは未熟ですし、国の治め方も、よく知りません」
「わかっているなら、すぐにでも――」
「でも!」
 ピスティはブロミアの言葉をさえぎりました。
「学問や稽古は、頭の中で考えているだけの学問にすぎません」
「減らず口を叩くな。本当ならお前のような悪たれなど、いくら王族とはいえ許してはおけぬのだぞ」
「許せないなら、どうするっていうんですか」
「分かりきったことだ。罪を犯した者には、罰を与えるのみ」
「それは間違っています」
 ちょっとでも気を緩めれば、怒鳴ってしまいそうになります。ピスティは、ブロミアが眠っているベッドを睨みつけました。体が弱っているせいか、ブロミアの顔は土気色になっていました。
「どんな悪者だって、悪者になりたくてなっているわけではないのです。戦争や災害で全てを失ってしまった者は、罪でも犯さなければ生きていけないのです」
 そう、それはピスティが身をもって知ったことでした。

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