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ここから始まる物語

第4章 確執

「財を失い、土地を追われた者は、山賊にでもならなければ生きられないのです」
 山賊を退治したあと、ゲンが言っていたことです。山賊になるくらいしか生きられる道はなかった、そう考えれば、山賊もまた哀れなものと言える――ゲンはそう言っていました。
 そんな山賊と、城の中で毛嫌いされている自分の姿を重ね合わせたピスティは、悪者として遠ざけられている人間に、急に共感を覚えるようになってしまったのです。
「まだ大人にもなっていないくせに、生意気なことを言うな」
「いつまでも子供のままではないと言ったのは父上ではないですかッ」
「なに?」
「僕は見たんです、自分の目で! 山賊に会いました。そして戦いました。もちろん山賊に襲われる村人を見過ごすことはできません。でも、山賊の顔も、生きるのに必死そうでした。あの顔を、僕は無視できません」
 押さえ込んでいた怒りが、鼻や耳や目から滲みだします。落ち着いて話していたのに、言葉の最後になると声が震えていました。我慢も限界に近づいています。
 その限界に、ブロミアがとどめを刺しました。
 ブロミアは、せせら笑いながらこう言ったのです。

「ははは、悔しいか」

「なんだって――」
 目の前が真っ白になりました。
 頭の中で何かが光って意識がなくなったかと思うと、気づいた時には、腰にさげていた剣を抜き放っていました。
 もう後先のことを考える余裕はありません。ピスティは、ベッドに横たわるブロミアに剣の先を向けました。
 その時です。

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