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ここから始まる物語

第18章 団結

「ピスティさま」
 ゲンの厳しい顔が、一瞬、柔らかくなりました。何を思っているのかわかりません。が、今はそんなことを気にしている場合ではありません。ピスティはゲンに言いました。
「今はとにかく、この場を乗り切ろう。ライはどうしたんだい」
 見れば、ライはゲンのうしろで倒れています。ピスティは、ライの顔の近くに屈みこみました。
 身体中に汗を滲ませ、荒い呼吸をしています。
「どうしたんだい、ライ。僕が、わかるか」
 苦しそうなライの耳元で、ピスティは叫びました。
 ライは、うっすらと目をあけました。
「ピスティさまだか。腹立てて悪かっただよ。許してほしいだ」
 しかし、すぐに目を閉じてしまいます。そんなライの頬を、ピスティは叩きました。眠らせたら死んでしまうと思ったからです。
「謝らないでくれ。悪いのは僕の方だ。ひどいことばかりを言ってしまった。僕にはライが必要だ。僕ひとりでは、いつどんな失敗をしてしまうかわからない。僕が過ちをおかしそうになったら、また力づくででも止めてほしい」
「ピスティさま。嬉しいだよ。許してもらえて」
「だから、謝らないでほしい。許してもらうのは僕の方だ」
 いくら強く言っても、いくら揺り動かしても、ライは口を閉じるとすぐに目を閉じてしまいます。ピスティはゲンに尋ねました。
「ライはどうしたんだ」
「毒に当たりました。さっき、暴徒が槍を投げてきましてな。それに当たったのです。槍だけなら、ライは平気でだったのですが、その槍の穂先に毒が塗られていたようなのです」
「助けたい」
「仲間でもないピスティさまが、どうして助けたいと思われるのですかな」

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