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ここから始まる物語

第18章 団結

「仲間になりたいからだ。戻りたいんじゃない。仲間に〝なりたい〟んだ」
 ゲンの厳しい質問に、ピスティは迷うことなくそう答えました。
「信じましょうぞ」
 ゲンは、深く頷きました。
「ライの毒は、薬さえあれば簡単に抜けるものにございます。しかし、この状況では・・・・・・」
 ゲンは辺りを見渡します。
 凶暴になった市民が、そこらじゅうで争っています。ゲンは策士ですが、こうまで孤立無援では、打つ手がないのも仕方がありません。
 ピスティも、ここまで来たは良いものの、どうやって帰るか、どうやってゲンたちを助けるかまでは考えていませんでした。助けたいというより、仲間にまた会いたい一心で、ここへ来てしまったのです。
 困っていると、暴徒のひとりが脇から槍を突き出してきました。
 ピスティはハッとしましたが、あまりにも突然のことで、避けることができませんでした。
 ――刺される。
 脇に痛みが走る覚悟を決めて、歯を喰い縛って目を閉じます。
 しかし、痛みは感じませんでした。
 おそるおそる目を開けてみると、ピスティに背中を向けて、フウが短剣を構えていました。槍を持った暴徒は、地面に倒れています。
「一点突破」
 フウは振り返って、そう言いました。無駄な戦いはせずに、とにかく逃げることが先だ、と言っています。さっきはあんなに喋っていたのに、また前のように短い言葉しか話さなくなってしまったのでしょうか。
「わしも今は逃げるのが最善と思う。しかし、ライがこれでは・・・・・・」
 ゲンは、地面に倒れて喘いでいるライを、切なそうに見ます。ゲンの言う通りです。いつもの四人なら、こんな暴徒くらい、どうということはないのですが、今は違います。もっとも強くて、もっとも体の大きなライが起き上がることもできないのです。
 これでは、逃げることもできません。

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