テキストサイズ

ここから始まる物語

第18章 団結

 せめて、あと二人くらい味方がいれば、この場を突破することはできるかもしれません。
 ――もっと仲間が居れば。
 そう思った時です。ふと、ピスティは思い出しました。
 レナが言っていた言葉です。
 レナは、民衆を助けるための方法を話していました。

 人間は心を失うと、獰猛になってしまうの――。
 でも、心を取り戻せば、欲をおさえて、人を思いやることができるようになる――。
 そのためには、戦いではなくて、まずは友愛を示すことが必要なの。だから――。

 抱きしめると元に戻すことができるのよ――。

 ピスティたちを取り囲んでいるのは、もともと暴徒なんかではありません。ピスティが好きだった、そして王が愛さねばならない国民たちなのです。そんな彼らを敵と思うことは誤りです。
 そんな簡単なことを忘れていたのです。
「僕がなんとかするよ」
 国民が心を失ってしまったのは、ピスティのせいでもあるのです。国王として、せめて責任を取らなくていけません。これ以上、王としての誇りを、人としての温かさを、捨てるわけにはいきません。
 ピスティは、剣を鞘ごと腰から抜いて、地面に投げ捨てました。そして両腕を広げました。
 無防備になったピスティを、暴徒が見逃すはずがありません。
 短剣を持った男が、雄叫びをあげながらピスティに向かってきます。
「来い!」
 ピスティは両腕を広げたまま、男が向かってくるのを迎えました。
「おおおおッ」
 男は猛り狂いながら突進しています。その赤く光る目に、知性はありませんでした。なんのためにピスティを殺すのか、それさえもわかっていない様子です。ただ破壊するのみ、といった様子。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ