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ここから始まる物語

第18章 団結

 ピスティは、両腕を広げたまま男に近寄り、その身体にしがみつきました。ピスティの背丈は、まだ大人の半分くらいです。だから、ピスティが抱きついたのは男の腹のあたりでした。
 男の胴囲に両腕を巻きつけて、ピスティは努めて穏やかな声で言いました。
「ごめん、僕のせいで心を傷つけてしまった。許してほしい。できるなら、癒させてほしい」
 しかし、男はまだ暴れるのをやめようとはしません。
「離せ、糞餓鬼ッ!」
 男は、ピスティを引き剥がそうと必死のようです。すごい力で襟首を掴まれ、前後左右に揺さぶられ、頭に鈍い痛みが走ります。殴られたのです。
「危機一髪」
 フウが短剣を構えて援護に入ろうとしているのが、視界の端に移りました。
「やめるんだ、フウ! 敵意を見せてはいけない!」
 とっさにピスティはフウを止めました。が、次の瞬間。
 ピスティの背中に、焼けるような痛みが走りました。
「ぐッ」
 うめき声が漏れます。肌と肉を焼くような痛み。同時に、背中にじわりと湿り気が広がりました。
 その湿り気は、背中を伝い、腰のあたりから赤い雫となって滴り落ちました。
 それを見てやっと何が起きたのかわかりました。
 刺されたのです。
 今抱きついている男が、持っていた短剣をピスティの背中に突き立てたのです。
「ごめん。僕を傷つけることで気が安らかになるなら、いくらでも傷つけていい。僕は、おまえの痛みのすべてを癒したい」
 身体から、熱い液体とともに意識も流れ出していくようです。
「ピスティさま!」
 ゲンの叫ぶ声が聞こえましたが、ピスティには、それへ返事をするだけの余裕はありませんでした。
 その後も何度か髪を引っ張られたり殴られたり、別の箇所を刺されたりしましたが、ピスティは黙って抱きしめ続けていました。相手を癒したい――その一心で。

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