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第19章 金色の軍隊

「ご無理なされてはなりませぬ」
 ピスティを諌めようと、ゲンが手を差し伸べてきます。しかしピスティは、反対にその手を掴んで、なんとか床の上に立ったのでした。
「ピスティさま」
 足に力が入らなくて、よろけてしまったピスティを、ゲンがあわてて支えます。
「仕方がありませぬな」
 ゲンは、困ったような顔をしながらも、優しく笑っています。
「睥睨可能」
 フウも、ピスティの体に手を添えます。
「フウの言うとおりですな。この場所は、街の中の高台にございます。直接街へ行くことはできなくとも、全体を見渡すことはできましょう」
「それでもいい。僕は街がどうなっているのか、ちゃんと見たいんだ」
「かしこまりました」
 ピスティは、ゲンとフウに両脇を支えてもらいながら、よたよたと窓辺へ向かいました。
 窓辺につくと、ピスティは窓の枠につかまって、眼下に広がる街を見渡しました。
 確かに、一部は焼き払われていますが、全体としては、無事なようです。
 レナの力で建てられた病院は、ここ以外にもいくつもあるようです。それに、市場も井戸も、充分にあるようです。もっとも、どんな願いでも叶えられるようになって、誰もお金を稼ぐ必要はなくなったので市場には人の姿はまったくいませんが・・・・・・。
 他には、人びとがそれぞれ願って建てた、大きくてきらびやかな家々が立ち並んでいます。
 そんな街並みを歩く人びとは、元気そうでした。中には、エカタバガンとの戦いで死んだはずの者もいます。亡くなった家族の顔をまた見たい、という家族の願いが魔法で叶えられて、それで蘇っているのです。
 街の中を歩く人びとの中には、もう赤い目の人間はいません。多くの人が、やけに張り切りながら街の中を歩いています。遊びに行くような様子ではありません。
「あの人たちは、どこへ行くんだろう」
 ピスティが呟くと、ゲンが答えました。
「ゆうべの騒動で壊れた場所を、みんなで立て直そうとする者たちが出てきているようです」

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