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ここから始まる物語

第20章 再会、抱擁、功罪

 僧侶の指示で、魔法使いは人びとに捕えられました。そして処刑することになったのですが、誰も、どうしても殺すことができなかったのです。
 それも当然といえば当然なのです。魔法使いの正体は、人間の欲なのです。欲の心が、目に見えるようになったものなのです。
 だから魔法使いを殺そうと思うなら、やはり同じように心の力を借りる必要があるのです。
 魔法使いが欲の心ならば、それと反対の心は何かお分かりになりますか。
 そう、理性です。忍耐や現実や努力、あまり人びとには好かれない言葉ですが、そうした心を使うことが、行き過ぎた欲の権化である魔法使いを殺すための、唯一の方法なのです。
 それを僧侶は人びとに説明しました。そして、これからは、そうした心で生きていくことを、人びとに強く決意させたのです。
 その決意も、魔法使いと同じように、目に見える形形になりました。
 それが――神なのです。
 人びとの欲から生まれた魔法使いは、人びとの理性から生まれた神によって封印されたのです。
 殺されたのではありません。封印されたのです。神の力といえども、魔法使いを殺すことまではできなかったのです。なぜなら、すべての欲を抑えることは、人間にはできないことだからです。だから、せめて、また人の心が喰われないようにと、封印することにしたのです。
 その封印された場所が、国王陛下もご存知の、あの場所です。
 そう、次の国王を決める儀式を行った場所の、はるか下にある森。そこにある祠です。
 だから、あの場所には神がお住いになり、欲を封印した祠を見張っていたのです。
 しかし、神は絶対的な存在ではありません。

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