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ここから始まる物語

第20章 再会、抱擁、功罪

「次の王を決める儀式の時に、ピスティさまは崖から落ちました。その時に、ピスティさまは強く願ったはずです。助かりたい――と。あの祠の中には、人びとの欲が詰まっていたのです。それにピスティさまの強い願いが加わって、ついに封印が溶けてしまったのだと私は考えています」
「そういうことか」
 とりあえずは辻褄が合っていると言えるでしょうか。
「王さま。お分かりいただけたでしょうか。だからレナさまには、どうしても消えていただかなくてはいけないのです」
「しかしレナは・・・・・・」
 今の長い話を聴いてみると、クリシーの言い分にも正しさがあるように感じます。
 ですが、レナはピスティとともに、多くの困難を乗り越えた相手です。婚約までしているのです。
「ピスティ」
 不意に、レナが口をひらきました。
「私は大丈夫よ。だから、悩まないで」
「しかし・・・・・・」
 レナ自身に言われても、ピスティはまだ決心できません。
「ピスティ、私が消えることを、殺すと思わないで。クリシーさんも言っていたでしょ? 私はそもそも人間じゃないの。殺そうとしても死なないの。人間は、完全に欲を捨てることができないから。それに私は、たぶん、かつてアウィーコート王国に現れた魔法使いとは違うわ」
「なんだって?」
「かつて現れた魔法使いは、国民みんなの願いを叶えていたって話だったでしょ。でも私は、ピスティの願いしか叶えられない。だから、私がこの世界から消えたあとは、きっと――たぶんだけど――私はピスティの心の中に戻るんだと思うわ」
「僕の心の中に・・・・・・?」
「そう。私は殺されないし消えもしない。ピスティの心の中に戻るの。お願い、私をピスティの心の中に戻して!」

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