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第20章 再会、抱擁、功罪

 心の中に戻す――そう考えれば、確かに受け入れることができそうです。
 でも、理屈ではなく、感情が、やはりレナを消してしまうことを拒んでいます。
 とはいえ、やはりクリシーの言葉をまったく拒んでしまうことはできませんでした。内容に納得できるだけでなく、何より、兵士を含めた多くの国民の目が、いつの間にかピスティに集中していたのです。言葉で言っているわけではありませんが、どの視線にも、レナを消せ――という思いが込められているように思えてならないのです。
 ピスティは思い悩んだ挙句、答えを出しました。

「レナを――消してくれ」

 そう言ったピスティは、まるで口から針を吐き出すかのような苦しさを感じました。
「ありがとう!」
 ピスティの気持ちなど知らずに――いや、知っているからこそでしょうか――レナが満面に笑みを浮かべてそう言いました。
「ご英断、感謝します」
 クリシーも地面に膝をつきました。
 神の軍隊を率いる将軍が、言いました。
「怠惰と空虚の魂を滅せん」
 すると神の軍隊は、素早い動きで、レナを丸く取り囲みました。そして何やら呪文を唱え始めます。

「唵 阿謨伽尾盧左曩摩訶母捺囉麼抳鉢納麼入嚩攞鉢囉韈哆野 吽」

 なんと言っているのか、どういう意味なのか、ピスティにはわかりません。しかし、同じ音を繰り返し唱えていることはわかりました。
 やがて、神の円陣の真ん中が強く輝きだしました。あまりに強い光のせいで、ミルクの海に沈んだかのように、あたりは真っ白になってしまいました。円陣の真ん中で、レナがどうしているのかも見ることができません。でも、優しい光でした。明るいけれども眩しくはなく、むしろ眠気が湧いてくるほど暖かくて、柔らかい光でした。
 呪文は、繰り返し繰り返し唱えられています。
 そういえば、レナが誘拐された時も、神はレナを閉じ込めた祠を囲んで呪文を唱えていました。

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