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ここから始まる物語

第20章 再会、抱擁、功罪

 ピスティはそれに驚いたものの、同時に懐かしさも感じていました。
「どういうことだ、クリシー」
 クリシーは、眉間に皺を刻んで、苦しそうに答えました。
「市場や井戸や病院ができたのは、すべて魔法の力のおかげです。贅沢を願った者の豪邸も、死人が生き返ったのも、美しい姿になれたのも、全部魔法のおかげなのです。しかしレナさまがその力を失ってしまったから、みんなあるべき姿に戻ったのです」
「つまり、魔法のおかげで治った僕の腕も、元に戻ってしまったということか・・・・・・」
 ピスティは肩をなでました。
 そう、これは惨事ではないのです。あるべき姿なのです。魔法の力で幸せだった世界は、理想に過ぎなかったのです。今の、この、悲しくて貧乏で醜い状態こそが現実なのです。これを受け入れた上でなくては、ピスティも含めて、誰も前に進むことは出来ないでしょう。
 でも、だとしたら、ピスティは死んでしまうはずです。崖から落ちて助かったのは、魔法の力のおかげ。もしレナの力が失われてしまったのなら、ピスティは腕が怪我をした状態になってしまうばかりか、命さえ失ってしまうはずです。
「なぜ、僕は死なないのだろう」

「それは、みんながまだ私を望んでいるからよ」

 愛しい声が、ピスティの耳に届きました。
「レナ!」
 レナは、ピスティをまっすぐに見ています。
「私の魔法の力は、弱くなってしまった。だから、建物も死人も美しさも、みんな元に戻ってしまったの。でも、見て」
 縛られて身動きのできないレナは、視線を遠くに向けました。その視線の先には、井戸がありました。
 大きな井戸です。レナが魔法を使う前にはなかった井戸でした。

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