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ここから始まる物語

第20章 再会、抱擁、功罪

「もし五年をかけても、僕がその方法を見つけ出せなかったら、その時は、レナを監禁することに反対しない。だけど、五年の間だけは、レナを救う方法を――いや、安全に魔法が使える方法を見つけるのに使わせてほしい。その間は、絶対にレナに手を出さないと約束してほしい。頼む、この通りだ」
 ピスティは、身体が痛むのを押して、地面に跪き、頭を深くさげました。
 これには、兵士たちたちも周りにいる民衆たちもどよめきました。王が庶民に対して頭をさげるなんて、考えられないことです。
「頭をおあげください、王さま」
 クリシーさえも、ピスティに気を使っています。
 しばらくの間、ピスティはひたすら頭をさげ、民衆はどよめいていました。
 肩のあたりから、ゲンの囁き声が聞こえてきました。
「ピスティさま、頭をお上げくだされ」
「ゲン・・・・・・」
 ピスティは恐る恐るあたりを見渡しました。人びとが、相変わらず厳しい視線を向けています。
 そんな民衆に、ゲンは言いました。
「皆の衆、聞いてくだされ。わしはピスティさまに賛成じゃ。五年の時間を、ピスティさまに差し上げてはどうか」
 しかし民衆はぴくりとも動きません。
 ゲンは民衆にさらに訴えました。
「皆の気持ちは分かるが、その前に隣にいる相手を見てくだされ」
 兵士も庶民も、首をひねっては周りにいる人と顔を見合わせます。
「今、顔を合わせた相手の中に、新しく知り合った者はおりませんかな? その相手とは、どうやって知り合いましたかな」
 それでも人びとは不思議そうに顔を見合わせているばかりでした。が、つかの間の時の後、やっとゲンの言うことを理解したらしく、みんな笑みを交わし合うと、口々に言うのでした。

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