
ここから始まる物語
第20章 再会、抱擁、功罪
「俺もゲンさんに賛成だ」
「五年くらい待ってやるよ」
「ずっとでもいいけどな」
しかしピスティだけは、相変わらず意味がわかりません。
「どういうこと?」
ゲンに小声で尋ねると、
「ピスティさまは肝心なところで鈍感ですなあ」
と苦笑いを浮かべました。
「魔法で街が荒れたゆうべ、いろんな場所で、いろんな人たちが争っていましたな。街は焼けたし怪我人も多く出ましたが、同時に、そのおかげで知り合い、親しくなった者も、多くいるのです。皆は、それを喜んでいるのです」
「ああ、そういえば」
それはピスティも感じていたことでした。
病院の中で見た人びとは、大きな争いの後だというのに、まるでいがみ合っていなかったのです。むしろ、讃え合い、愛し合い、理解し合っていました。
「あの争いはひどいものでしたが、でも、あの出来事がなければ、民衆はこれほど親しくならなかったでしょう」
「そういうことか」
しかし、ピスティは手放しで喜ぶことができませんでした。もちろん、ゲンを含めた多くの人たちの気持ちは嬉しいのですが・・・・・・。
民衆同士がこれだけ親しくなれたのは、確かに、昨夜の騒動があったからでしょう。しかし、同じくらいに、民衆は痛い目を見ているのです。怪我をしたり、もともとあった建物が焼けてしまったり・・・・・・。さらに、それより前のことまで考えるなら、ピスティがせっかちなことをしなければ、戦争だって起こらずにすんだのです。
もしも功績と罪過があるなら、罪過の方がはるかに上回っていそうです。
ピスティがそう言うと、
「しかしピスティさまは、いずれもご自身でその罪過を償われた。戦争ではエカタバガンを追い返したし、魔法の力で失われてしまった人びとの心を取り戻しました。そんなにぼろぼろになってまで、ですぞ」
