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ここから始まる物語

第21章 断章

 フォビスは、アビナモスの取り計らいで、こうして城へ通されることが許されたのです。
 アビナモスに促されて、フォビスは答えました。
「私がここへ来たのは、純粋にエカタバガン帝国の繁栄を願ってのことです。アウィーコート王国の豊かな大地を手に入れれば、軍事大国であるアウィーコート帝国は、農産物をも豊富に手に入れることができるようになります。そうなれば、エカタバガン帝国は、もはや向かうところ敵無しとなるでしょう。世界に君臨することも、夢ではありません。その一助になりたく、ここに参上しました」
 フォビスは歓迎されるとばかり思っていましたが、そんなフォビスを皇帝は鼻で笑いました。

・・・ほほう。祖国で虐げられた恨みを、エカタバガン帝国の力を借りて晴らそうというのか・・・

 皇帝の声は、大理石に反響して不気味に響きます。

・・・わがエカタバガン帝国を利用しようとは、なかなかずる賢い奴でございますな・・・

 皇帝の横に座っている側近と思われる老人が、嘲笑混じりにそう言いました。

・・・いや、ずる賢いというよりは肝が小さいのでござろう。おのれでは何も出来ぬゆえ、我らを頼ったのだ・・・

 また別の声がそうフォビスを嘲りました。
 フォビスは図星を突かれて息が止まりましたが、あくまで本音を隠してさらに訴えました。
「そんな! 利用しようなどとは思っていません。私は、本当にエカタバガン帝国の力になりたいだけです」
 が、そんな建前など通じるはずがありません。フォビス自身も、通じるとは思っていませんでした。本音をさらけ出すことなどできないので、建前を通すしかなかったのです。

・・・ふふふ、あくまで復讐心を出さないその演技力はかってやろう・・・

・・・陛下、油断なさるとこやつに足元を掬われますぞ・・・

・・・掬うほどの度胸がこやつにあるとは思えぬが・・・

・・・それもそうですな・・・

 くすくすくす。

 ふふふふふ。

 はははは。

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