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第21章 断章

 嘲りの声が、光の届かない天井に響きます。
 その嘲りにフォビスが耐えていると、隣でアビナモスも一緒になって笑い声をあげました。
「まこと、おっしゃる通りですな。こんな腑抜けが、わがエカタバガン帝国の力になりたいなど、もはや失笑してしまいます」
 しかし、そんなアビナモスにも、皇帝たちは冷笑を浴びせました。

・・・アビナモス、そなたもアウィーコートにはやられていたな・・・

・・・そなたもアウィーコート王国には恨みがあるのであろう・・・

・・・同属憎悪、といったところですかな・・・

「な、何を仰せか。私を嘲るおつもりか」
 アビナモスはこめかみに血管を浮かべて抗議しましたが、帰ってきたのは、笑い声だけでした。

 くすくすくす。

 ははははは。

 ふふふふ。

・・・まあよい・・・

 皇帝の声がそう言うと、笑いはおさまりました。

・・・で、フォビスとやら、アウィーコートを攻め落とすに当たって、おまえはどう役に立つというのだ・・・

「はい。ご存知の通り、私はアウィーコート王国で育った人間です。地理には詳しいので、危険な場所やアウィーコートの弱点などをすべて知っております」

・・・なるほどな。それは確かに重要なことだ。では、おまえに兵を預けるからアウィーコートを攻め滅ぼしてみよ・・・

・・・陛下、そのようなことを簡単に決めてしまって良いのですかな・・・

・・・安心しろ。エカタバガンの守りが手薄になるほどの兵は預けん。この男を信頼することも、まだできないしな・・・

・・・手並み拝見と言ったところでございますな・・・

・・・そういうことだ。どうだ、フォビス、やってみるか・・・

「お待ちください!」
 皇帝の言葉に反対したのは、アビナモスでした。

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