
ここから始まる物語
第22章 最後の戦い
【それぞれの決意】
~クリシーの場合~
同じころ、また別の場所で、行き交う人々に演説を披露している男がいました。
クリシーです。
クリシーは、道端に立ち、両手を広げながら、歌うような調子で人びとに訴えていました。
「みなさん、慌てることはありません。エカタバガン軍は、決してアウィーコート王国を滅ぼすことはできません。なぜなら、私たちには神がついているからです。みなさんもご覧になったはずです。神の軍隊は美しいばかりか逞しく、そして強いのです。神の正体は、われわれの意思の結晶です。魔法の力に頼らない、自分たちの力で生きていくと決めた、われわれの意思が形になったものなのです。だから皆さん、今こそ祈ってください。我々は負けないと強く念じてください。その思いが強ければ強いほど、神の力も大きくなります。みなさん、神に祈りを――いえ、自らの心に決意を!」
しかし、そんなクリシーの演説に耳を傾ける者はいませんでした。みんな往来を駆け回り、避難の準備をするものもいれば、中には兵士でもないのに戦いの準備を固めている者もいます。その一人に、クリシーは訴えました。
「戦う必要はないのです。祈るだけでいいのです。決意することが大事なのです。みずからの命を危険に晒すような真似は、してはなりません」
しかし相手は、皮の鎧を身につけながら、ふっと笑ったのでした。
「坊さんのいうことはわかるぜ。でもさ、おかしいじゃねえか」
「おかしい? 何が」
「もう魔法の力に頼らない、自分たちの力で生きていくことを決めた俺たちの意思。その結晶が神なんだろ?」
「そうです。だから祈りを――」
~クリシーの場合~
同じころ、また別の場所で、行き交う人々に演説を披露している男がいました。
クリシーです。
クリシーは、道端に立ち、両手を広げながら、歌うような調子で人びとに訴えていました。
「みなさん、慌てることはありません。エカタバガン軍は、決してアウィーコート王国を滅ぼすことはできません。なぜなら、私たちには神がついているからです。みなさんもご覧になったはずです。神の軍隊は美しいばかりか逞しく、そして強いのです。神の正体は、われわれの意思の結晶です。魔法の力に頼らない、自分たちの力で生きていくと決めた、われわれの意思が形になったものなのです。だから皆さん、今こそ祈ってください。我々は負けないと強く念じてください。その思いが強ければ強いほど、神の力も大きくなります。みなさん、神に祈りを――いえ、自らの心に決意を!」
しかし、そんなクリシーの演説に耳を傾ける者はいませんでした。みんな往来を駆け回り、避難の準備をするものもいれば、中には兵士でもないのに戦いの準備を固めている者もいます。その一人に、クリシーは訴えました。
「戦う必要はないのです。祈るだけでいいのです。決意することが大事なのです。みずからの命を危険に晒すような真似は、してはなりません」
しかし相手は、皮の鎧を身につけながら、ふっと笑ったのでした。
「坊さんのいうことはわかるぜ。でもさ、おかしいじゃねえか」
「おかしい? 何が」
「もう魔法の力に頼らない、自分たちの力で生きていくことを決めた俺たちの意思。その結晶が神なんだろ?」
「そうです。だから祈りを――」
