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第5章 対決

「あそこに的が見えますね」
 僧侶は、遠くに見える森へ人差し指を向けました。
 森の手前に、棒に打ち付けられた丸い板が立っています。あれが的でしょう。
 的は、二色に塗り分けられていました。
 真ん中は赤色、外側は黒色です。
「あの的へ向けて矢を放ちます。赤色の部分に当てたら百点。黒色の部分に当てたら五十点。それぞれ三本の矢を放って、合計点の多い方が勝利です。次の王になる資格を得ます。いいですね」
 最後に年を押した僧侶に、
「分かってらあ」
 とピスティは自信満々に答えました。それとは反対に、フォビスは恭しく胸の前で腕を横にして、
「わかっているよ」
 と答えました。
 その気取った態度が、ピスティは気に入りません。ふんっと鼻を鳴らしして、顔を背けました。
「では、どちらが先に矢を射るかを決めましょう」
 僧侶は、法衣のたもとからコインを取り出しました。
「表が出たら、兄上のフォビス様が先、裏が出たら弟君のピスティ様が先です」
 言うが早いか、僧侶は親指の背にコインを載せて、それを弾き飛ばしました。
 コインはくるくると回転しながら飛び上がり、そして落ちてきました。
 落ちてきたコインを、僧侶は手のひらで受け止めます。
「表です。先に矢を射るのはフォビス様です」
「それでは――」
 フォビスは弓に矢をつがえて、きりきりと引き絞りました。
 鏑(やじり)を的に向け、矢羽根を掴んでいる手を目の横にあてがいます。
 それまで騒いでいた見物人も、この瞬間ばかりは静かになりました。 

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