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ここから始まる物語

第22章 最後の戦い

【時は今】

 レナはうずうずしていました。
 鎧と兜を身につけ、剣を携え、義勇軍の旗印となったのはいいのですが、いつ出撃するべきか、その見当がつかないでいたのです。
 ところが、ついにその時がやってきました。
 レナのいる避難区域に、ただならない喧騒が響いてきたのです。
 鉄の軋む音、雄叫び、大勢の足音、金属がぶつかり合う音・・・・・・。
 それらは、間違いなく戦いが起きていることを示していました。
「レナさま」
 義勇軍の一人が、声をかけてきました。レナはそれに頷き返しました。
「いよいよ戦いが始まったわ」
 レナは白い馬に乗り、高らかに剣を掲げると、義勇軍に号令しました。
「時は今! アウィーコートの戦士を助けるために出撃!」
 義勇軍が、いっせいに勇ましく声を張りあげます。
「続け!」
 レナは、掲げていた剣を前に倒して、馬の腹を蹴りました。
 地鳴りのような足音を響かせながら、レナと義勇軍は避難区域から出撃していきました。

 ※

 ゲンは、レナたちが出撃していくのを、じっと見ていました。
 本当は心配でなりませんでしたが、ゲンにそれを止めることはできませんでした。ゲンはもう老いています。考えることは出来ても、実際に戦うことはできません。
 戦いに行く者に、戦えないものが偉そうなことは言えません。作戦を練ったら、あとは口出ししないことが、戦う者に対する、ゲンのせめてもの礼儀でした。
 若いころは、戦場で剣を奮ったこともあるのですが。
 今は、この避難区域にいる国民を守ってあげること――それがゲンの役割です。もっとも、戦えないのでは守ることもできませんが。
 昔を思い出して自分の老いを感じていると、国民の一人が、不安そうな声でゲンに尋ねました。
「ゲンさま」
 見れば、まだ年端もいかない少女です。

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