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ここから始まる物語

第22章 最後の戦い

【決闘】

 これはもう、運命なのだ――ピスティはそう思いました。
 もう少しで敵の本陣に突撃できると思った、その矢先に邪魔が入ったのです。
 しかも、邪魔に入った相手の先頭に立っていたのは、あの憎らしい兄、フォビスだったのです。
 フォビスが連れていた兵士は、ざっと百人ほどといったところでしょうか。ピスティが連れていた兵士と同じくらいの人数です。
 戦力が同じくらいということもあってか、すぐに戦いが起こりました。
 が、ここは森の中。生い茂る草木や枝葉に阻まれて、敵も味方もうまく動けません。
 それはピスティも同じでした。右から寄ってくる敵に斬りつけ、返す刃で左の敵の武器を弾き、正面から繰り出される槍は身を翻してかわし、その動きで背後から迫る敵に体当たりをし、とにかく動きを止めることなく、戦い続けました。ところが、剣を振るえば枝にひっかかり、走れば茂みに足を取られ、周りを見渡そうとすれば葉に遮られ、思い通りに動くことができないのです。
 兵士たちも、木々の枝葉や茂みに苦労しながら、激しく得物をぶつけ合っています。
 雄叫びをあげる者はほとんどいません。動くことに必死で、叫んでいる場合ではないのでしょう。
 剣のぶつかる音と茂みが揺れる音だけがあたりに響いています。戦場としては、あまりに静かで、それはとても不気味に感じられました。
 ピスティは、少し後ろへさがりました。うまく動けないのと、激しい戦いで息が切れたのです。
 ピスティがさがると、まるで息を合わせたように、兵士たちがまわりに集まってきました。そしてピスティを中心に、みんなで背中を向け合いながら敵に武器を向け、近づけないようにしています。
 敵も同じでした。乱れた隊列を整えるかのように、フォビスを中心に集まっています。

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